KYOWAの技術閑話

切削、成形、金型というKYOWAが持つ3つの技術にまつわる話を分かりやすくご紹介

<切削工場と環境問題(鳥取工場)>

■技術を磨くだけでは時代遅れ。切削にも環境の波

『環境』という言葉が一人歩きを始めました。最近では、企業の仕組みの中に環境方針を盛り込むISO14000の取得ラッシュに代表されるように、営利目的の企業にとっても環境保護を考えざるを得ない状況となってきました。
我々の業種、とくに切削は切削油の飛び交う中での作業であり、当然廃油や削った金属の粉も出るだけに、環境には必ずしもやさしいとは言い切れません。こうしたダーティーなイメージに対して、鳥取工場では過去から工場内の清掃美化、環境改善に積極的に取り組んできました。

切削工場内にエアークリーナーを取り付けているのもその一環。これは単なる空気清浄機ではなく、オイルミストと呼ばれる油煙を除去する装置。空気を吸い込み、内部の電解エアーフィルターで、油を焼き切る。その油カスがエアークリーナー下部にぶら下がった容器に溜まっているのが写真でも見えます。こうした装置をすでに10年以上も前から取り付けおり、工場内に油煙が漂うということはありません。加えて、床が油染みていることもなく、切削工場でありながら工場内は土足厳禁で作業にあたっています。

■冷風加工の実用化

 これからの切削工場の大きな課題は、廃油の処理です。切削工程における油は、機械の中で循環して使うために細菌が発生して異臭を放ちます。当然、油煙は空気を汚し作業環境を悪化させます。
 また、油の付いた切りくずの処理も課題。切削油には塩素系の添加剤が混ぜられていることが多いため、廃棄物として処理する過程でダイオキシン等が発生する可能性もああるのです。しかも、切削油の購入費だけではなく、再利用するための設備、エネルギー、処理の費用など廃棄するために膨大なコストを費やしています。
 これまで切削と油は、切っても切れない関係にあると思われていました。油を注ぐ第一の効果は摩擦熱を逃す働きで、熱を逃して金属の膨張を抑え、切りくずを取り除く働きもあることから、加工精度を上げるためには重要でした。ただ、油の働きは熱を逃すことが大半であることから、代用品も模索されています。そこへ登場してきたのが「冷風加工」という概念です。ドイツではすでに実用化されているそうです。


 冷風加工は、その名の通り油の代わりに−30度もの冷風を吹きかけます。難点は、冷風が通る管に凍結がおき、作業を止めている時、それが水滴となってしたたり落ちること。まだ、騒音においても課題があります。
 ただ、こうした点をクリアすれば、ほぼ実用化の域に達しています。当社でも実験の結果、部品精度、材質によって実用化のめどが立ちつつあります。切削加工から油が消える日も、そう遠くはないかもしれません。

■環境これからのキーワード

 今日では地球上のどの地域でも環境のことを考慮しなければならない時代です。また、そうした面に前向きに取り組んでいくことこそ21世紀型企業使命だといっても過言ではありません。もはや資源を採集し、欲しいときに早く安く手に入れ、使った後は捨てるといった概念は通用しません。人間が生きていくために必要な活動が、環境汚染を引き起こしているのです。従来の方法にこだわっていては改革、改善は進まないのです。まったく新しい概念、手法、システムによって、我々個人のライフスタイルも、会社のライフスタイルもつくり変える時代となったのです。「構造改革なくして成長なし」まさしくこの言葉が時代を象徴しています。

(鳥取工場)

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